Googleアナリティクスでショップサイトを改善する(分析編)

アクセス解析は、これまで経験や直感からサイトの問題点を推測していたところに、別の視点をもたらしてくれます。
また、施策を実行して効果を検証する際にもデータという面から検証可能にしてくれます。
これまでより説得力のある仮説や施策を立てることが可能です。

今回は、Googleアナリティクスを使いながらサイト分析し、現状を把握します。

その過程でショップの強み・弱みなども浮かび上がり、ショップを利用してくれる具体的なユーザー像(ペルソナ)も明確になります。
このあたりは、マーケティングの話とも重なります。興味があれば、入門書を読んでみることをお勧めします。

コーポレートサイトのサンプル

とあるA社(コーポレートサイト)についてみていきます。

ネットショップとは若干事情が異なります。
例を挙げながら進めていきますので、使えそうなところを参考にしてください。

A社の本業はウェブサイト制作を行うことで、自社のウェブサイト上でマーケティングのすべてを行い、その一環としてブログ記事を書いています。
サイトを開設して今年で2年目です。

サイト分析を始めましょう。
(以下の図表の数値は仮設のものです)

このサイトのユーザーはどんな人たち?

ユーザー属性

ユーザー>ユーザー属性>概要

年齢層はGoogleが推定したユーザーの年齢を集計しています。

A社では30代を中心に、20~40代が8割以上、性別は 男性 2:1 女性 です。
実際にご依頼をいただくのは女性が多い印象。閲覧ユーザーの男女比とは少しズレがあります。
何に起因するズレだろうかと考えて、仮説を立てます。
 

ライフスタイルや趣味

ユーザー>インタレスト>概要

表示させるためには、Google広告と連携している必要があります。

アフィニティカテゴリ…主にライフスタイルによるカテゴリ分け
購買意向の強いセグメント…商品やサービスを購入することを前向きに検討している見込み顧客

A社では価格重視の買い物好き、新技術好き、ビジネス専門家などの訪問があります。

上位にある新技術好きは、たぶん男性で同業の方かな、という気がします(仮説)。
上図のように男女混ざったデータでは、それが正しい推測なのかは判断できません。

Googleアナリティクスではセグメント機能を用いることで、男女を分けて分析できます(カスタムセグメントを使います)。

オレンジが女性、グリーンが男性で、A社のユーザーの傾向が性別ごとに表示されました。
・女性はエコ好き、価格重視の買い物好き、インテリア好き
・男性は新技術好き、ビジネス専門家、価格重視の買い物好き

セグメントで分る前に比べると、ユーザー像がかなり具体的になりました。
女性からコンバージョンが多い理由も、ユーザーのスタイルの違いから説明できそうな気がします。

ペルソナを作るときにも活用できます。
サイト制作時に想定したユーザー像とのズレはありませんか。

セグメント機能の使い方は次回紹介します。
レポートで表示されるデータはごちゃまぜの大きな塊なので、信憑性のある仮説を立てるには、セグメントを使って区分分けしたデータをみなければいけないという点を覚えておいてください。
 

ユーザーのデバイス

ユーザー>モバイル>概要

デバイスカテゴリ(desktop、tablet、mobile)ごとにデータを見ます。

A社ではパソコンからが80%以上、デスクで閲覧している状況が多いようです。
場所は職場(会社、お店)、それとも自宅の自室でしょうか。
 

ユーザーの訪問時間帯

ホーム>ユーザーが訪れる時間帯はいつですか?

曜日・時間帯のレポートはメニューにありませんので、より細かい分析を行う場合はカスタムレポートで集計します。

A社では平日の15-16時ごろにピークがあるようです。
土日や時間帯別のユーザー数をみると、職場・仕事場から訪問しているユーザーが多いのではないでしょうか。

細かいデータを時間別で見るには、ユーザー>概要

皆さんのショップでは、別の傾向が出ているのではないでしょうか。
たとえば、朝の通勤時間なのか、会社の昼休みなのか、仕事が終わって帰宅後なのか、夕食を作っている時間なのか、など。

企業はメルマガを送るなどの施策を行う場合は効果的な日時を検討しています。
売上規模が大きくなるほど、それだけでコンバージョン率が上下したとしても不思議ではありません。
 

新規顧客とリピーター

ユーザー>行動>新規顧客とリピーター

A社では、訪問者数の比率は新規顧客(New Visitor)8:2 リピーター(Returning Visitor)。
コンバージョン率を見ると、リピーターは新規顧客の3倍あります。

A社はサービス業なので、新規顧客がコンバージョンするには信頼度や認知度がたりていないのかもしれません。伝え方を考える必要がありそうです。

それ以外で気づいた点は、リピーターのほうが行動の指標(直帰率、ページ/セッション、平均セッション時間)が良好です。
 

エンゲージメント

ユーザー>行動>エンゲージメント

ユーザーとページの結びつきの強さ。
セッション時間はサイト訪問から離脱までの時間です。

すぐに離脱してしまうユーザー(0-10秒)を減らして、セッション時間を長くしていく必要があります。言い換えると、ユーザーのサイト満足度を上げることです。
SEO対策としても有効ですし、周りまわってコンバージョンにもつながると考えられます。

すぐに離脱する主な理由(仮説)は
・ユーザーが求めていたページでなかった→情報を盛り込む。検索時のタイトル・概要を検討する。
・ファーストビューの要素→ぱっとみの胡散臭さ、ナビゲーションの使いやすさ。読みやすさ読みにくさ。
・表示が遅い→特にスマホ。盛り込みすぎていないか。

お客様にアンケートするのもよい手です。
 

同業他社をベンチマークする

ユーザー>ベンチマーク>チャネル

ページ/セッション、セッション時間、直帰率の目標決めの際に参考になります。
他社との比較から、自社の強み・弱みも。

A社では、行動に関連する指標から平均以上の評価・満足度がみられたものの、Refferalチャネル(外部リンク)のセッションがかなり少ないことに気づきました。
 

ユーザーレポートのまとめ

A社サイトは開設以来、ユーザー数やセッション数は順調に伸びていましたが、コンバージョン数は大きな変化はありませんでした。

ここではユーザーの切り口で理由を考えるわけですが、ユーザーを適切なセグメントで区分分けされたデータをみることで、より信憑性の高い仮説が立てられるわけです。
どのセグメントでみるのか、まずは直感に従って試してみることです。

ペルソナを作ったことがない方は、一度やってみるとよいです。
お客様のイメージが強固になりますので、サイト制作や施策決めで、ぶれが減ります。

流入元を分析軸にコンバージョンをみる

集客→行動→コンバージョンの一連の流れ

集客>概要

ディメンションはチャネルまたは参照元に変更できます。

A社ではOrganic Searchが90%弱。
Social、Referralのコンバージョン率が高く、ユーザー数は少ないものの、コンバージョン数は半分近いです。

チャネルごとの信頼度の違いでしょうか。
仮説を立てるには、チャネルのリンクをクリックして流入要因の詳細をみることです。

集客ページの改善

検索で人気のページ

集客>Search Console>ランディングページ

どのサイトでも、検索流入が大半を占めていると思います。
SEO対策は流入元の整備という意味では重要です。

改善する箇所は、タイトル、概要、ページの中身になります。
まずは表示回数とクリック率から、タイトルと概要を見直す必要がないか検討します。

直帰率が高い場合はページの中身の検討が必要かもしれません。
読了率プラグイン(jQuery)を導入して、どれくらい読まれているか確認するのもよいでしょう 。
「行動」レポートの「平均ページ滞在時間」も参考になります。
ぱっとみで帰るのか、最後まで読んで帰るのかでは、意味が変わってきます。

直帰といってもさまざまな理由が含まれていて、ユーザーが探していた情報ではなかったのか、探していた情報を手に入れて帰ったのか、一部でポジティブな理由も含まれています。

A社ではSEO対策で検索流入の増加があった際もコンバージョン数は微増でした。
SEO対策=コンバージョン数アップとは簡単にいかないもので、どういうユーザーが訪問してくれたか分析することが重要ではないでしょうか。
 

検索キーワードでニーズを調べる

集客>Search Console>検索クエリ

ユーザーのニーズ(悩み・欲求)、訪問した目的を読み取ることで、SEO対策やサイト改善を行います。

コンテンツ制作は、ニーズだけでなくその周辺()も意識して盛り込むと、満足度の高いコンテンツになります。
キーワードも忘れずに埋め込みます。

ロングテールなキーワード

ユーザーのニッチな需要にもヒットするように、ロングテール(検索キーワード3~4語)もチェックします。
カスタムレポートで集計するようにしておくと、チェックしやすいです。

カスタムレポートについては、次回紹介します。
 

集客レポートのまとめ

A社ではキーワードの表示回数は直近の半年で3倍以上に大幅に増加していますが、クリック率は1/2に半減しています。

理由はGoogleのアルゴリズムの変更、ページ数が2倍に増えたこと、ページの質の低下も考えられますし、タイトルや概要がピンとこないのかもしれません。
これらの直感に基づく仮説は、Googleアナリティクスのデータを使って検証していきます。

コンバージョンしにくいキーワードもあります。SEO対策の優先度を見極める必要があります。

行動を中心に見る

コンバージョンの起点となったページ

行動>サイトコンテンツ>ランディングページ

起点となったページを切り口に分析します。
集客、行動、コンバージョンとまとまっていますので、分析に使いやすいページです。

直帰率が高い場合は、ページを見直して改善点を探り、
ページ/セッションが低い場合は、他の参考ページにリンクが張れているか、
コンバージョン率が低い場合は、ユーザーの誘導がきちんと行えているか検討します。

 

ナビゲーションサマリー

行動>サイトコンテンツ>すべてのページ>ナビゲーションサマリー

どのページからきてどのページに移動するのか、ユーザーの行動をみることができます。

A社では、記事ページ→問い合わせページが少ないので、導線の見直しを検討しています。

似たようなレポートに「入口からの遷移」もあります。
行動>サイトコンテンツ>ランディングページ>入口からの遷移
入口(ランディングページ)を切り口にどのページに移動して離脱するかという分析です。
 

離脱ページ

行動>サイトコンテンツ>離脱ページ

離脱率=当該ページでサイト離脱した数/当該ページのページビュー数

離脱率はいろいろと含んだ数字です(1以下、低いほどサイト内をうまく回遊している)。
内容が1ページで完結している場合もありますが、ネットショップの場合はコンバージョンにつながっていないとも言えます。

回遊性を上げる目標の場合は、離脱率やページ/セッションを指標にします。
 

サイトの速度

行動>サイトコンテンツ>離脱ページ

離脱原因としてサイトの速度も挙げられますが、レンタルショッピングカートなどのサービスを借りている場合は、解決できない問題も多いです。

サンプリング(デフォルトでユーザーの1%)して計測しているので、サンプル数が少ないときは遅いデータの影響が残りやすいです。

各ページの速度はこちら。
行動>サイトコンテンツ>サイトの速度>分布

デバイス、ネットワーク、ブラウザごとに分けて分析すれば、理由がよりはっきりとするでしょう。

コンバージョンをみる

コンバージョン>目標>ゴールフロー
ゴール(目標)に到達したセッションを分析します。
あらかじめ、目標と目標達成プロセス(管理>ビュー>目標)の登録が必要です。

下の画像では切れていますが右にスクロールし、ゴールに至るまでの目標達成プロセスのIN/OUTが視覚化されています。
カゴ落ちの様子がわかります。

コンバージョン>eコマース>概要
eコマースの売り上げたデータの分析を行います。
eコマースのコンバージョン率、平均注文額の指標が表示されます。

Googleアナリティクス まとめ

重要なレポートの見方を中心に解説しました。
分析だけで終わらずに、分析→仮説→施策→検証と繰り返し、サイト改善に活かしていく必要があります。

直感的な仮説はさらに掘り下げた分析で信憑性を高めることが必要です。
その結果、より具体的な施策や数値目標(KPI)が立てられますし、数値目標が立てられれば検証も細かく行えます。最終的には経験として蓄積されます。

このあたりは次回説明します。

執筆者

えいじ@naeco.jp この記事を書いた人

メーカー系情報システム部門出身の個人事業主。
自作するのが好きですぐに試したくなる、凝り性なWebエンジニア。
カラーミーショップ、モールなどのECについて記事にしています。

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